訃 報
タラスベク・アセムクロフ Talasbek Asemkulov 氏 (1955-2014)
Таласбек Әсемқұлов (Talasbek Äsemqulov). 2014年9月29日歿。59歳。
カザフの二弦の撥弦楽器、ドンブラ dombïra の演奏家。カザフスタン中・北部におけるドンブラ演奏様式「シェルトペ šertpe」の第一人者。
セミパラチンスク州アクトガイ生まれ。中ジュズ(中オルダ)のナイマン部の出身。
有名なドンブラ奏者であった祖父ジュヌスバイ・スタンバエフ Zhunusbay Stambaev (1891-1973) から最初にドンブラ演奏を学んだ。その後、ラヒムベク Rakhimbek に、そして、特に、タッティンベト Tättimbet (1817-1860) のキュイ küy(器楽独奏曲)の忠実な伝承者バガナル Baganaly (1895〜1982) から、伝統的な伝承方法でドンブラ演奏を学び、タッティムベトに代表されるシェルトペ様式のドンブラ演奏を、その精神的内面と共に伝承した。
しかし、ソビエトの音楽教育システムにおいて音楽大学(консерватория)の学位を持っていなかったため、音楽教育者としては不遇であり、音楽学校で教鞭を執る機会に恵まれなかった。
ドンブラ演奏者としての経歴の他に、カザフ文学とロシア文学を学び、出版社で働き、小説家となり、さらに映画脚本家として活躍し、多方面にわたる文化活動を行い、カザフ文化の伝承・発展に尽した。
フランスで発行されたCD、L'héritage de Tättimbet. Dombra du Kazakhstan / Dombra from Kazakhstan. Volume 2. Paris, Buda Musique, n.d.. [3018213] に11曲の演奏が収録され、その付録DVDに‘Lecture’と‘Episode’の語りと3曲の演奏の映像が収録されている。(上記の経歴は、本CDの解説文に基づく)
還暦前の御逝去、カザフ文化の継承においても大きな損失と拝察いたします。
御冥福をお祈り申し上げます。
(2014年11月4日記. 増補あり)
|
|