2020年全ロシア国勢調査の衝撃

 2020年全ロシア国勢調査(https://rosstat.gov.ru/vpn_popul)の民族別人口統計が、かなり衝撃的です。
 2002年と2010年の民族別人口順位は、@ロシア、Aタタール、Bウクライナ、Cバシコルト、Dチュヴァシ、Eチェチェン、でしたが、2020年には、@ロシア、Aタタールは不動、Bチェチェンが躍進、Cバシコルト、Dチュヴァシは維持、Eアヴァルが人口100万人超え、と入れ替わりました。
 順位を三位から八位に大幅に下げたウクライナ民族は、ロシア連邦における人口が18年間に三分の一未満に減少し、五位を維持したとはいえチュヴァシも人口が三分の二に減少しております(60万人減)。
 二位タタールと、四位バシコルトも減少しており、18年間でタタールは84万人、バシキールは10万人の減少です。
 これらの人口減少の要因には、自然減のほかに、ロシア民族への所属変更があるのかも知れません。しかし、ロシア民族自体も、新たにクリミア半島の人口が加えられたにもかかわらず、1030万人も減少しておりますので、それだけで説明することも困難であるようです。やはり、ロシア国外への人口流出が大きいのではないでしょうか。
 しかし、人口を大きく伸ばしている民族集団もあります。北カフカスの人口25000人以上の諸民族は、オセット、ラク、アバザ、アディゲ、アゼルバイジャン(ダゲスタンの先住民族の一つでもあります)、カバルダを除き、多くが人口を堅調に増加させております。
 一方、ヴォルガ・ウラル地方のフィン系諸民族の人口減少は、目を覆わんばかりの惨状です。
 これら五民族で18年間100万人の減少です。これにタタール、バシキール、チュヴァシをも併せますと250万人以上の減少となり、エストニア二個分に迫ろうとする人口が消えたということになります。
 他のフィン系諸民族におきましても、地域民族社会を構成しているカレリア、ヴェプス、サーミは、ことごとく人口が激減しており、民族文化を将来にわたって維持すべき見通しは暗いとしか言いようがありません。
 北方諸民族では、多くの諸民族が軒並み人口を減らしている中で、ヤクート(サハ)、ネネツ、エヴェンキ、チュクチ、ハント、ドルガン、そしてなぜかユカギールが増加しております。
 トゥバ、アルタイ、ソヨト(ブリヤート化したトゥバ)も順調に増加しておりますが、ブリヤート、カルムィクは増加から減少へと転じ低迷しております。
 これらの人口統計をまとめた「2002年、2010年、2020年ロシア連邦民族別人口統計一覧表」を公開いたしましたので、関心がおありの方は御覧ください。
 なお、ここには、2020年全ロシア国勢調査民族別人口一覧表に挙げられている、別称・下位集団名等も転記しました。ちなみに、「中国人 Китайцы」には、下位集団として、「保安人 баоани, 苗 мяо, 台湾人 тайванцы, チベット人 тибетцы, 漢 хань, 漢人 ханьцы, モン(苗)人 хмонги, 紅胡子 хунхузы, 雲南人 юньнаньцы」が挙げられており、「紅胡子」が民族集団であるかのように扱われており、興味深く思われます。
 なお、この国勢調査の後に、プーチンによる忌まわしき「特別軍事作戦」が始まりましたので、各民族別人口は、さらに大きく変動していることでしょう。何度でも繰り返しますが、早急にロシア連邦軍が、クリミアを含むウクライナ共和国の全領土から撤兵することを、心より願います。
2023.1.5


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