哀悼
ヒシクトクトホ č.kesigtoγtaqu(賀希格陶克陶)先生
中央民族大学中国少数民族語言文学学院蒙古語言文学系教授
『『アルタン=ハーン伝』訳注』(東京, 風間書房, 1998.3)の著者の御一人であり、日本でも高名なモンゴル文学研究家のヒシクトクトホ先生が、2022年2月24日、シリンホト市でお亡くなりになられたとの訃報に接しました。悲しみに堪えません。
先生は、1940年12月、内モンゴルのケシクテン(克什克騰)旗のお生まれです。1966年、北京の中央民族学院(のちの中央民族大学)語文系蒙古語言文学専業本科班を御卒業の後、母校にて教鞭を執られ、1993年、教授となられました。1993年8月から1994年8月まで早稲田大学に招聘され、早稲田大学の吉田順一教授のもとで『アルタン・ハーン伝』の共同研究を行われました。その成果が、『『アルタン=ハーン伝』訳注』です。
先生は、『モンゴル秘史』、元朝期の文人仏僧チョイジ=オドセル chos-kyi 'od-zer(搠思吉斡節兒)、清末期の文豪インジャーナシ injannasi(尹湛納希)、さらには「現代中文散文家、詩人、画家」の席慕蓉(1943年生)に至るまで、幅広い分野でモンゴル文学・文献学を研究されました。それら重厚な研究成果のうち、モンゴル語によるものは、『賀希格陶克陶文集』上中下(内蒙古教育出版社, 2013.5)にまとめられております。
先生が早稲田大学に招聘されていらっしゃった当時、大学院生でありました私は、所用があるわけでないにもかかわらず、たびたび先生のもとを訪れては、スーテイチャイ(乳茶)をいただきつつ、筆談によって雑談に時を過ごしていたものでした。また、私が運転する自動車で、先生の御家族を九十九里浜に御案内したこともありました。
先生の謦咳に触れることができましたことは私には大きな歓びです。今、深い悲しみと共に、先生から受けた御厚誼をあらためて想い起しております。
先生の御冥福を心より御祈り申し上げます。
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