訃報

マリア・索(瑪麗亞・索 / 瑪利亞索 Maria Sologon / Мария Сологон)老
19212022
オルグヤ・エベンキ人の民俗文化伝承者。

 内モンゴル自治区東北地方の大興安嶺のオルグヤ・エベンキ人(敖魯古雅鄂温克人。ヤクート・エベンキ人、トナカイ・エベンキ人)の古老。
 2022820日死去。享年101歳。
 エベンキ人の大氏族、ソロゴン Sologon(索羅共)氏族出身。
 マスコミ等によって「最後女酋長」と呼称された。
 作家、遲子建の第七回茅盾文学賞(2008年)受賞作品『額爾古納河右岸』(日本語訳:遅子建 著, 竹内良雄・土屋 肇枝 訳『アルグン川の右岸』白水社〈エクス・リブリス〉20144月。https://www.hakusuisha.co.jp/book/b206379.html)の主人公のモデルとして知られる。
 彼女の逝去は、2003年に「生態移民」として「定住」生活へ移行することとなったオルグヤ・エベンキ人のトナカイ遊牧文化の消滅を象徴する、とも言うことができるであろう。

参考:
 中華人民共和国国家民族事務委員会
 National Ethnic Affairs Commission of the People's Republic of China
 国家民委网站
 瑪麗亞・索和她的馴鹿、山林 (201787日)
 https://www.neac.gov.cn/seac/c100456/201708/1075363.shtml

 北京戰馬時代文化伝播有限公司
 101歳中国最後一位女酋長離世:“雨雪看老了我,我也看老了雨雪。”(202282513:00
 https://mp.weixin.qq.com/s/9A9NRaRQWM9YSZABotkkrg

 エベンキ民俗文化伝承者としての彼女が歌うエベンキ民謡の録音は、私が把握する限りでは、現時点ではまとまった音源がないようであるが、次の三点のCDに収録されている。

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 爲~而唱的歌


 爲~而唱的歌
 The Song for Gods.
 敖登托雅 odontuyaa [自主制作], n.d.[2017].

 CD 2
 17. 毛敖吉坎
 18. 古加耶
 19. 薩滿調
 20. 森林的求助
 21. 庫什米爾将軍調
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 SP-0012

 中國第一張鄂温克族原生態唱片 歴史的聲音
 Native sounds of Evenki.
 廣州, 廣東鴻藝音像有限公司 / 廣東音像出版社, n.d..
 [SP-0012]
 ISBN 978-7-79895-901-7

 10. 毛敖吉河
  敖魯古雅鄂温克民歌 演唱:瑪麗亞・索(84歳)
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 7-88324-085-3

 胡靜的歌 神秘的敖魯古雅 胡靜演唱專輯
 呼和浩特, 内蒙古文化音像出版社, n.d..
 ISRC CN-C18-08-313-00/A・J6
 ISBN 978-7-88324-085-3

 2. 古佳邪
  鄂温克民歌 瑪麗亞・索 友情演唱.

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 なお、巨冊『鄂温克族民歌精選(エベンキ族民謡精選)』(呼和浩特, 内蒙古文化音像出版社, 序言:201410月. ISBN 978-7-88324-507-0)の152153頁には、「瑪麗亞・索的伊坎 mɑliyasu i:kɑŋ(マリア・索のイーカン)」(1980年代にフルンボイル盟民委春節慰問団が来た時に即興で歌った舞歌 i:kɑŋ)の楽譜と歌詞と漢語訳が掲載されているが、音源はCDに収録されていない。

 ちなみに、彼女は漢語を解さず、日本語交じりのロシア語を常用していたという。
 彼女が属したオルグヤ・エベンキ人(敖魯古雅鄂温克人)の近現代について日本語で読めるものとしては、思沁夫(スチンフ sečenküü)氏の一連の研究、
 ・思泌夫「中国トナカイエベンキ人の社会経済変化 19世紀から20世紀前半まで」
  『社会環境研究』第4号, 1999.3, pp.161-170.
 ・思泌夫「中国トナカイエベンキ人の社会経済変化(1947年から1960年代初頭まで)」
  『社会環境研究』第5号, 2000.3, pp.173-184.
 ・思泌夫「中国トナカイエベンキ人の社会経済変化(1960年代から1970年代後半まで)」
  『社会環境研究』第6号, 2001.3, pp.45-54.
がある。
 また、F.Georg Heyne, "The Social Significance of the Shaman among the Chinese Reindeer-Evenki". Asian Folklore Studies, Volume 58, 1999: pp.377-395.PDF:https://nirc.nanzan-u.ac.jp/nfile/422)には、彼女と彼女の夫ウラヂミル(拉吉米・何)の名が、マリア・ソロゴン Maria Sologon、ウラヂミル・カルタクン Vladimir Kaltakun と記されている。



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