今を去ること約四十年前、高校生および浪人生の頃、夜な夜な、社会主義諸国の日本語ラジオ放送を、中波ラジオで聴いていたものでした。短波ラジオという趣味的な器材は所持しておりませんでしたので、ふつうのラジオで中波(AM)放送を聴いておりました次第。
もちろん社会主義プロパガンダには関心がなく、目的は別にありました。即ち、ユーラシア諸民族の民族音楽です。
最も熱心に聴いていたのは、モスクワ放送(Радио Москва / Radio Moscow)の日本語放送、毎週金曜19時台の「ソ連諸民族のメロディー」です。木曜19時台の「ロシヤ民族音楽」も聴きましたが、金曜日だけは万難を排して、ひたすらラジオにカジり付いておりました。
モスクワ放送の中波(AM)放送の周波数は、NHK第二放送と平壌放送との間の0.72MHzと、ニッポン放送の隣の1.25KHzで、日時によって電波の受信状況が変わり、音が良い方で聴いておりました。なお、ラジオを東西方向に置くと、比較的、雑音が少なかったものです。
通学先の高校には「同志」がおりまして、競って受信証明証(ベリカード)を入手しておりましたが、モスクワ放送の場合は国際便でなく、東京都港区麻布狸穴町の「モスクワ放送東京支局」宛てに、ふつうのハガキで、せっせと受信報告を出し(それらは、おそらく東京からモスクワへと空輸されていたのでしょう)、そこに音楽のリクエストをも添えました。
そして、ちょうど四十年前の1984年5月24日の消印のある、モスクワ放送日本課(Radio Moscow Japanese Section)からの航空便にて、リクエストしたチュワシとタタール、バシキールの民族音楽が放送されるとの連絡がありました。