赤坂恒明 著
『 前近代傍系皇族・皇胤研究 』
市川、志学社、二〇二五年六月
ISBN 978-4-909868-16-9
https://shigakusha.jp/2025/07/03/book015/
【紹介文】
天皇については膨大な研究の蓄積があるが、天皇から分岐した傍系皇族・皇胤については先行研究が非常に少ない。本書は、陽成天皇の子孫とする説が有力であった清和源氏、実体不明であった冷泉源氏、六波羅攻めの但馬宮、美濃の南朝軍を率いた尾崎宮、出雲国に足跡を残す大覚寺統の土御門宮(柳原宮)、史上唯一の「戦国期在国皇族領主」の遠江木寺宮、伊勢奉幣の「使王」とその代役「使王代」その他に関する論考を集録し、天皇制を周縁・外縁から相対化することを試みる、前近代皇族史研究の基礎となるべき論文集である。
【目次】
序
第一章 世ノ所謂清和源氏ハ陽成源氏ニ非サル考 ── 源朝臣経基の出自をめぐつて ──
はじめに
一 源経基裔と源氏爵
二 源経基の初叙
三 天暦七年の王氏爵不正事件と「孫王」経基
四 「源頼信告文案」における系譜の作為性
をはりに
補論一 源経基の位階と「六孫王」号
はじめに
一 源経基の極位
二 平将門の「謀叛」を密告した源経基に対する位階剥奪の有無
三 武蔵介任官者の位階
四 源経基の初叙位階
五 源経基の大学寮入学の可能性
六 源経基の「六孫王」号
おわりに
第二章 冷泉源氏・花山王氏考 ── 伯家成立前史 ──
はじめに
一 「冷泉源氏」に関する疑問
二 昭登・清仁両親王の諸子
三 延信王と康資王
四 康資王の諸子
おわりに
第三章 ■【晶灬】王考 ── 建武期前後の傍流皇族をめぐって ──
はじめに
一 ■【晶灬】王の諱、叙任と、その出自に関する先行研究
二 尾崎宮の出自と事蹟
三 六波羅攻めの上将軍「但馬宮」について
おわりに
第四章 但馬宮令旨考
はじめに
一 但馬宮(四宮)令旨の存在
二 『播磨清水寺文書』第五号文書と大塔宮
三 『播磨清水寺文書』第五号文書と但馬宮(四宮)・但馬国守護太田氏
おわりに
第五章 前田本『日本帝皇系図』について
はじめに
一 前田本『日本帝皇系図』の内容構成と編纂年代
二 前田本『日本帝皇系図』附載「伯」系図
三 前田本『日本帝皇系図』における注目すべき記載
四 前田本『日本帝皇系図』と邦省親王家(花町宮)
おわりに
第六章 柳原宮考 ── 大覚寺統の土御門宮家 ──
はじめに
一 日記史料における、柳原宮に関する記載
二 出雲国杵築大社領十二郷と柳原宮
三 柳原宮邦満とその系譜
四 大覚寺統の土御門宮
五 出雲の来待の「土御門親王」
おわりに
第七章 遠州木寺宮考
はじめに
一 邦良親王、康仁親王、邦恒王、世平王
二 邦康親王とその子孫
三 遠江国浜松庄における木寺宮領
四 木寺宮の遠江移住と、妙顕寺日広上人
五 遠江国敷智郡入野の木寺宮
六 『龍雲寺文書』における二点の天正七年文書
七 木寺宮の終焉
おわりに
第八章 中世における皇胤の末流「王氏」とその終焉
はじめに
一 中世における王氏の系統
二 王氏爵に預かって叙爵された王氏(諸王)の実在性
三 『歴名』における王氏(諸王)
おわりに
補論二 江戸時代における花山天皇の玄孫
第九章 伊勢奉幣使王代 兼字王考
はじめに
一 先行研究に主拠した、兼字王と兵庫寮河越(川越)家の系譜
二 『百年以来近代地下諸家伝』と「真継系圖近代写」における河越家と真継家
三 兼任王と兼久王
四 使王代、兼字王の実体
おわりに
第十章 史料紹介 青木庸行撰『百年以来近代地下諸家伝』
はじめに
一 『百年以来近代地下諸家伝』の概略
二 『百年以来近代地下諸家伝』の記載内容一覧
三 『百年以来近代地下諸家伝』の成立年と、記載の特徴
おわりに
補論三 刀鍛冶の徒弟であった御落胤、伏見宮貞致親王
はじめに
一 貞致親王の誕生
二 貞致親王の母方、安藤家
三 貞致の青少年期 ── 鍛冶屋の徒弟、長九郎
四 伏見宮家の家督争いの渦中に浮上した貞致
五 貞致の逼塞
六 伏見宮家における血統断絶の危機
七 貞致親王の伏見宮家継承
八 宮廷社会には「異風」の貞致親王
おわりに
補論四 越後高田の瑞泉寺に降嫁した繼{(政子女王)について
結
あとがき
略系図
人名索引